もっとも美しい武具!?

 端午の節句のお飾り、鎧や兜飾りというとなぜ武具を飾るのか、とおっしゃる方がいらっしゃいます。そう言ってしまえばそうなのですが、すこしだけ違う意味合いもあります。

 全国の神社などに現在も国宝や国宝級の鎧兜がたくさん残されています。それぞれがとんでもなく豪華なもので、縅(おどし)の絲や彫金など当時の技術の粋を集めたような作品ばかりです。戦後進駐軍がわが国に駐留し、その国宝級の鎧兜を目にした時「なぜ、武具なのにこんなに豪華絢爛なのか?」と驚いたそうです。そして、関東から中部、関西に至るまで多くの鎧兜や調度品が英米仏に持っていかれてしまいました。現在、こうした驚愕するような鎧兜が東北や瀬戸内など辺鄙な場所にしか残されていないのは、これが原因なのかと思います。ボストン美術館や大英博物館などに多くの日本の甲冑が残されているようですが、すこし返して欲しいですね。欧米に日本の甲冑のマニアがたくさんいて、「世界で最も美しい武具」と賞賛されているのにはこうしたわけがあります。

 本題に戻り、お節句などに用いられる鎧や兜は、武具でありながら武具ではないのです。1000年前でも現代と同じ親心、子供が立派に成長するように華麗できわめて装飾的な鎧兜を奉納し、神仏に祈るための供物のようなものだったのです。武士にとってもっとも大切な甲冑を美麗にこしらえ、神仏に捧げたものなのです。ですから、当店では戦国武将が実際に用いたような「武具」としての甲冑をモデルにしたものは扱いません。節句の本来の意味から外れるからです。

 写真はそんな当店の兜飾りのひとつです。画像ではわかりにくいかもしれませんが、彫金などすみずみまできわめて精緻に作られています。屏風は翠山師に描いていただいた手描きの菖蒲絵、両脇は短檠という、お雛様でいえばぼんぼりに当たる燈台です。そして、前に並べてあるのが八足(はっそく)三方揃い。これは、お節句の日に粽(ちまき)などお供えしていただくための大切な道具です。これもお雛様で言えば菱餅などにあたる、本来であれば節句飾りになくてはならないお道具です。好戦的なにおいのない、長くお使いいただける節句飾りです。

 また、これは「必ず」というわけではありませんが、ご家庭で飾っていただくときには、作者名の書かれた「立札」は箱の中にしまって置かれたほうが上品に見えます。フクサにも作者名が書かれていますが、お洋服のタグを表に出して飾っているようで好きではありません。立札などはお店でお客様がご購入のときヒントになるようつけられているもので、できれば飾る時には作者名は後ろにした方が綺麗に見えます。

 どうぞちゃんとしたお節句飾りを!