連載 お雛さまの重箱のスミ 121

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お雛さまの着物

 女雛の装束 ~2~

 襲ねと重ね

 

莟紅梅

 

 

花柳

 ほとんどのお雛さま(女雛)は十二単を着ています。十二単とは十二枚の着物を着ているというわけではなく通称で、そのかたちはおおむね決まっています。神社の巫女さんのような白い小袖に赤い袴姿、この上に長い袖の打掛のような衣を着かさねていきます。

 まず最初に単。衣はすべて床を引きずる長さですので上に着る衣を傷めないような役割もあって、一回り大きく仕立ててあります。周囲はすべてコヨリのように丸くひねられています。

 次に、5枚の五つ衣(いつつぎぬ)ですが、3枚~6・7枚のこともあります。何枚着ていても五つ衣と呼びます。そしてその上に表着(うわぎ)を着て、これで通常の生活をしています。寒い時など、これらの間にさらに衵(あこめ)という衣をかさねることもあります。

 そして、人前に出るときや行事の時などは、この上に唐衣(からぎぬ・からころも)という腰までの短い丈の衣を着て、腰の後ろに裳(も)という白いエプロンのようなものをつけ、これについている帯で全体を締めます。

 ですから、小袖袴姿の上から数えれば、単=1、五つ衣=5、表着=1、唐衣=1、裳も数に入れれば全部で9枚の装束ということになります。小袖や袴も数に入れれば12枚くらいにはなりますね。

 五つ衣や表着など、単以外の衣は全部裏地が縫い合わされた「袷(あわせ)」になっています。表地よりも裏地を数ミリ大きくして、衣の端に少し裏地が出るようにします。こうして5枚の五つ衣を重ねると、襟元や袖口に10色の色が出ることになります。これに単や表着の色目を加えたのが「襲の色目」です。

 その一枚ずつの裏表の色目を「重ね」と呼び、それぞれに雅な名前がついています。

 画像の一番上は「莟紅梅(つぼみこうばい)」という重ねです。

 二番目は「桜」、裏朱ともいいお雛さまではよく使われる重ねです。

 三番目「花柳(はなやなぎ)」、柳の緑は桃と並んで春の最も美しい色の一つとされ、しばしば登場します。

 おびただしい種類の重ねのひとつひとつにこうした名前が付けられ、それが書かれているだけで私たちは女性の姿を思い浮かべることができます。さらに、色目だけでなく装束の織柄(文様)も触れていきたいと思います。書物にかさねだけでなく文様まで記されていればかなり具体的に姿を想像できるというものです。

 

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