お雛様の重箱のスミ的考察⑧

「ひねり」

女雛の衣装。白い小袖、赤い袴の上に最初に着る一枚が単(ひとえ)です。この単にごくまれに端がコヨリのように丸く巻かれたものがあります(濃い緑の単)。ヒネリといいますが、実際の装束もこのようにひねられています。徳川美術館に展示されている古いお雛様の単部分はほとんどこのようにひねられています。女雛だけでなく、男雛も、供の人形も単の端はこのようにひねられています。

人形でこれをするのはたいへんなので、ほとんどが端を二つか三つ折るか、全体を二つに折って(単ではなくなってしまいますが)着せ付けられます(赤い単)。さらに、袖口を柔らかく見せるためか、手首部分を少し内側に折り込んで着せる場合があります(黄緑の単)。実際の装束ではないことですが、袖口を柔らかく綺麗に見せるためにしています。

お雛様の重箱のスミ的考察 ⑦

お雛さまでお人形の次(?)に大きな要素となるのは「屏風」です。お人形の背景となり、面積も大きいので飾ったときお部屋の壁面などとの映りにも影響があります。

色や柄だけでなく、その「作り」にも多くの種類があります。

「作り」には大きく分けて2種類あります。簡単に言えば、金属の「チョウツガイ」を使ってあるかどうかです。

本来、屏風というのは紙や布を木枠に「表具」してこしらえられ、一面ごとのつなぎ目は「紙蝶番(かみちょうばん)」という特殊なつなぎ方がされています。本式の紙蝶番は反対側にも曲げることができます。そして、こうした屏風は表具師によってこしらえられます。周りの黒枠は、上端の角は縦棒と横棒が斜め45度に切られて組まれ、下端は切り口直角のままドン付けされます。内部は障子のような枠に下貼りをした上に表紙が貼られ、中は空洞になっています。

一方のチョウツガイ屏風は、主にベニヤ板やボードに色柄を塗装したり紙などを貼り付けたものをチョウツガイでつないだもので、「表具」の技術が要りません。主に木工屋さんでこしらえられます。

どちらが良いかはお客様と販売店の判断に委ねられるもので、好みや飾る場所、価格にもよりますので一概に申し上げることはできません。

当店ではあまり用いませんが、現状では大半がこの金属チョウツガイの屏風になっています。

ふすまや障子、掛軸など表具師の活躍する場面がどんどん少なくなっているのが現状です。文化を支える技術、技術を支える文化、技術と文化は表裏一体のものです。節句行事が伝統文化であるなら、その文化を伝えるためにも節句飾りにはこうした技術を少しでも採り入れ続けたいと思っています。

謹賀新年

謹賀新年
新年は3日より営業いたします。
ひな祭りが待ち遠しくなるような、わくわくするお雛さまをたくさん取り揃えてお待ちしております。
おかげさまで今年は創業140周年を迎えさせていただきました。感謝の気持ちをこめて、お買い上げのお客様に貝合わせ一組をプレゼントさせていただきます。国産はまぐりに純金箔押し、手描きの貝合わせです。先着50名様となりますので、お早めにお出かけください。

雛人形の重箱のスミ的考察⑥

男雛の肩です。最初のはスパッときれいに折られています。

2,3は肩のところをつまんで、丸く折られています。

2,3の方は束帯装束の着付けに準じて「衣紋襞(えもん

ひだ)」を再現しています。肩の線は水平に近く、折り目は

わざわざ丸く襞をつけてあります。どちらが人形として

きれいかはお客様が判断されればいいのですが、「わざわざ」

そうしてあることにご注目下さい。

雛人形の重箱のスミ的考察⑤

男雛の肩です。最初のはスパッときれいに折られています。2,3は肩のところをつまんで、丸く折られています。
2,3の方は束帯装束の着付けに準じて「衣紋襞(えもんひだ)」を再現しています。肩の線は水平に近く、
折り目はわざわざ丸く襞をつけてあります。どちらが人形としてきれいかはお客様が判断されればいいのですが、
「わざわざ」そうしてあることにご注目下さい。


雛人形の重箱のスミ的考察④

黄櫨染という装束の男雛です。即位の礼などで天皇がお召しになる装束です。この織柄は桐竹鳳凰麒麟文の筥形といって、麒麟は竹林に住むと言われ、鳳凰は桐の実を食むというところから採られた格式の高い柄です。上に二羽飛んでいるのが鳳凰、下の方に分かりにくいですが麒麟がいます。
この柄には当然、上下があります。上の写真は前から見たところで、鳳凰が上にいますが、普通に織られた裂地(きじ・おりもの)だと、後ろ側は柄がさかさまになってしまいます。ところが、このお雛さまは、後ろから見てもちゃんと鳳凰が上に来るように織られた裂地を使ってこしらえられています(下の写真)。ごくわずかですが、このようなところまで意識して作ってもらいます。
また、首のところに白い糸で?がありますが、これは高倉流の装束で、山科流で+になっているものもあります。襟口をとめる「とんぼ」というボタンにあたるものをこれでとめてあります。
まさに重箱のスミ中のスミのお話。職人と取り扱う者の単なるこだわりです。


雛人形の重箱のスミ的考察③

お雛様の衣装に使われる裂地は、人形だからと言って特別に薄いわけではありません。
だから、この襟元は職人にとって腕の見せ所のひとつでもあります。十二単というくらいなので、多くの衣装が着重ねられる襟元は、
その厚みを感じさせないよう、どのように自然に見せるかが問われます。重ね方にも一枚ずつ交互にする人もいれば、全部を一緒に
重ねる人もいます。重ね方は好みでしょうが、美しく自然に見せる技術と工夫に差が出ます。

雛人形の重箱のスミ的考察②

三人官女の真ん中の人が持ってるのを「島台」といいます。宮中の大切なお祝いの行事に飾られるもので、蓬莱山を表していると言われ
松竹梅に鶴亀、お人形などもこれに飾られます。それを羽子板にしたものがこれ。縁起物の羽子板をさらに縁起良くしたものです。
高さ24センチほど。


 

雛人形の重箱のスミ的考察①

雛人形の重箱のスミ的考察①
お雛様の重箱のスミ的な謎 1
人形店ではお正月飾りや雛人形の売り出しが始まっています。プロが見る雛人形の良し悪しのキモを少しご披露していきます。
このお人形は手のひらサイズの、京雛としてはとても小さなものです。見ていただきたいのは腰の帯。白いエプロン状の「裳(も)」というものについている帯一本で十二単は着せられます。その帯。女の子の細めの胴回りがはっきりわかるように着せられています。
かわいい!
※「衣裳」の語は、「衣」と、この「裳」のことです。