連載 お正月飾りの重箱のスミ 109

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破魔弓 ~その二~

 矢の本数 「四方拝」

現代的なデザインに見えますが、伝統工芸品の

駿河千筋細工を用いた、竹と木でできた破魔弓。

矢羽根は天然のフクロウです。壁に掛けて飾る

こともできます。五本矢。当店製

 

 破魔弓飾の矢の本数をお訊ねになる方がいらっしゃいますが、特になにかのこだわりがなければ本数にあまり意味はありません。しかし、中に「四ツ矢飾り」と銘打っている商品があります。その由来は、「四方拝(しほうはい)」という儀式にあります。

 前項で述べたように「大祓」は年に二度あり、冬は十二月三十一日に行われます。そして翌一月一日の未明、帝によって四方拝が宮中、神嘉殿の南の庭で行われます。普通の儀式で帝が地面に降りることはないのですが、この四方拝は地面に降り、屛風を立てまわした中で四方と天地に向かって礼拝します。現在は天皇家の私的な行事になっていますが、新嘗祭などと同様に代拝のできない重要な儀式のひとつとされています。一部の神社や弓道家でも四方拝は行われ、その際に四方に矢を射ることがあります。これをもって四方矢、四ツ矢の由縁とされているのです。ところが、神社などによっては、四方に射た後、天に向かって一本射たり、天地に向けて二本射ることもありますので、五本矢でも六本矢でも良いことになります。

 矢の行事は上加茂神社の始まりと深い関わりがあります。その昔、玉依比売命(たまよりひめのみこと)が賀茂川の川上から流れてきた丹塗の矢(赤い矢)の力によって懐妊し、御祭神・賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)が誕生したと伝えられています。上加茂神社では、毎年一月十六日に武射神事が行われ、赤い鏑矢(かぶらや)が射られます。このときは、四人の神官が二本ずつ射ますので二本でも八本でも良いのかもしれません。

 総じていえるのは、矢の本数はあまり関係ないということでしょう。弓と矢が組み合わさった飾りであれば、縁起的には矢の本数に関わりなく何本でも大丈夫です。

 

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