連載 お雛さまの重箱のスミ 113

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お雛さまの手 手足師  澤野さんの仕事

先日もこの記事を揚げたのですが、ネット上の何かの不都合でこの記事を含め№113以降が消えてしまいました。保管してある記事から少しずつ再掲していきます。御迷惑をお掛けしました。(こんなことがあるんですね)

男雛の手 袖から出ている部分は

10ミリほどです

女雛の手。指先がふっくらとし、爪が

刻まれています。

桐の木の棒の両端に一組ずつ作ります

 

ひとつの雛人形は、たくさんのパーツの職人によってできあがっていることは前にも述べました。

今月、その中で「手足」だけをこしらえる職人さんが「現代の名工」に選ばれました。実にうれしいニュースです。なくてはならないものなのに、ほとんど注目されることのないお仕事です。わたしたちにとっては、「澤野の手」というとそれなりのお人形でないと使えない特別なものなのです。

澤野正さん。人形の手足だけを作り続けておられます。

絵画、彫刻の世界でも、手や指先の表情はお顔の表情とともに特に重要視されます。手、指先の表現だけで性別や年齢、時には職業や地位、人間性までもがそこにあらわれるからです。

雛人形の場合には、主体が「姫」や「殿」ですので、古典文学にあらわされるように手は「ぷくぷくとした」上品でゆたかなものでなければなりません。手の甲はふっくらと、指は長めに、指先の腹はこころもち丸くふくらませます。上級品の場合には指一本一本に淡紅色の爪まで描かれます。同じように作られているようですが、人形本体の職人さんごとに少しずつかたちを変えて作られています。まさに超絶技巧です。

よく「木製」と表示されている手のついたお雛さまがありますが、澤野師の場合は木製の手の甲に、指の芯となる針金を一本一本さしこみ、全体を胡粉で肉付けした上で指を一本ずつ彫刻しますので、「木製」ではありません。しいて言えば「針金・胡粉製」です。針金を芯にすることによって、微妙な指の表現が可能になっています。

若干、ひっかかるのは師の仕事が「装身具等身の回り品」の中の「玩具製造工」に分類されていることです。「金属加工」、「造園士」、「食料品製造」など二十数項目に分類されているのですが、この仕事が「玩具」に分類されるのにはいささか抵抗があります。「節句品製造」のような項目があるといいのですが難しいのでしょうか。私たちの感覚としては、神具や美術工芸に近いように思います。

※玩具とは「もてあそぶもの」という意味です。雛人形をもてあそぶことは、まずありません。どちらかと言えば、祝い、祈る対象です。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、生涯学習教室様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします

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