五節句とお正月 ~その三~
「倚松樹以摩腰」⇒「かい~の」

内内神社の松。これなら腰が曲がらないかも・・
以前、間寛平さんの、「かい~の」と言いながらお尻を突き出して机の角などにこすりつけるギャグがありました。よく笑わせてくれましたが、このギャグの元ネタ、ひょっとしたら古代から伝わる日本の伝統的な風習からとられているのかもしれません。
111の項でご紹介した伊勢貞丈さんの文中に出てくる漢詩ですが、これは和漢朗詠集に載っている、「倚松樹以摩腰、習風霜之難犯也。和菜羹而啜口、期気味之克調也。」(松の木によりかかって腰をこすりつけるのは、年月によって体が衰えないための習いである。若菜の雑炊をいただくことは、心身の調子をよく整えるためである。菅原道真 筆者訳)から来ています。
まさに寛平ちゃんの「かい~の」そっくりで、かなり深いギャグであることがわかります(笑)。
この日は「子の日(ねのひ)の遊び」「小松曳(こまつびき)」といって、老若男女が野に出て生えかけている小さな松の苗木を抜き、春の七草を集めて雑炊をこしらえいただきます。年配の方は松の木に「かい~の」と言って腰をこすりつけます(ウソですよ~)。宮中でも「子の日の宴」といって、若菜の雑炊で宴会を行っています。松の苗木は、持ち帰って「若松の根合わせ」といって根っこの立派さを競い合います。現代で言えば、二月の初~中旬、寒さの中にも春の兆しが感じられる時候でした。
子の日と言うだけあって、これは年の初めの子の日に行われてきました。一方、毎年一月七日は「白馬の節会(あおうまのせちえ)」といって、宮中で白馬を見る行事が行わていました。白馬はとても縁起の良いものとして珍重され、この日のために全国から白馬が集められました。馬だけでなく、キジやハト、鹿など白い動物なら何でも縁起物として集められました。いわゆるアルビノというもので、遺伝子異常による突然変異の動物です。後には、見るだけではつまらなくなって、白馬に限らず立派な馬を集めて競走させるようになり、さらに盛り上がる一日となりました。
白馬の節会の行事をもっと充実させるためか、あるいは経費節減のために一つにしたのかわかりませんが、子の日の宴は七日に固定して行われるようになりました。七草粥をすすりながら競馬を楽しんだのですね。縁起の上にさらに縁起を重ね、とても縁起の良い日になりました。
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