連載 お正月飾りの重箱のスミ 114

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五節句とお正月 ~その四~

 (はねつきの)突羽根

突羽根        左義長風羽子板  手描き「宝尽し文」

蓬莱羽子板

 人形屋で販売されるお正月飾りの代表的なものは「破魔弓」と「羽子板飾」です。羽子板を知らない方はいらっしゃらないと思いますが、「お正月に羽子板を飾る」という風習のない地域もあります。意外にもその中のひとつに京都があります。京都にはいわゆる押絵の羽子板を飾るという風習がありません(飾っていけないわけではありません)。でも、その代わりに「左義長羽子板」とか「蓬莱羽子板」というものがあります。江戸時代に、人気の歌舞伎役者の姿を押絵で羽子板に仕立てたのが江戸で流行したので、京都には伝わらなかったのか、伝わっても東のはやりものとして嫌われたのかもしれません。

 今回はそんな羽子板につきものの「突羽根(つくばね)」のお話。黒豆のようなのに鳥の羽根がついた、バドミントンのシャトルのようなものです。羽根は鳥の羽根ですが、頭の黒豆は「ムクロジ」という木の実です。漢字だと「無患子」と書きます。

 ムクロジの木にはちょうどさいころくらいの大きさの黒い実がなります。それが、のどぼとけの骨に似ているところから「骸子」と書いたそうですが、やはり、それではちょっと・・ということでずいぶん昔から「無患子」という字があてられているようです。さいころを漢字で「骸子」と書くのはこの実に似ているからのようです。高級な数珠にもこの実が用いられています。

 よく、突羽根の舞うさまが蚊を食べるトンボに似ているので、蚊に刺されて病気にならないおまじないとも言われます。突羽根が宙を舞うさまがトンボに似ているとは思えませんが、それよりも、では、なぜ蚊のいる夏ではなくお正月の風物詩みたいになってしまったのかが不思議です。まあ、縁起物ですからそこはあまり追求しない方がいいのでしょう。広重の絵にも羽根突き(追い羽根)の様子が描かれたものが残されています。

 

 

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