連載 お雛さまの重箱のスミ 114

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 貝合せと源氏物語絵巻

徳川義崇館長

左端は処理前のハマグリ。少し黒ずんで

います。薬品処理の後、ペーパーで磨き

きれいにします。大小さまざま

こんな風に飾ることも・・なんか

楽しいですね

徳川美術館では開館90周年記念特別展「国宝 源氏物語絵巻」が開催中です。

さっそく拝見にうかがいました。残念ながら、源氏絵巻に書かれている文は私にはほとんど読めません。しかし、絵の方は八百年近い年月が経っているにもかかわらず(※)、きれいな色彩が残っています。さらに、その絵を科学的に解析し、当時のものに近い紙、絵の具を用いて描かれた「復元模写」が同時に展示されており、こちらは本当にきれい。その復元した方の中に林功先生の名前を発見し、感無量です。かつて、名古屋城本丸御殿の襖絵などの復元模写にご尽力をいただいた復元模写の第一人者で、何度かお目にかかる機会を得、県芸大のアトリエにもお邪魔した先生です。惜しくも本丸御殿の完成を見ず、中国で事故死されました。25年前の11月でした。

図らずも、先生の描かれた絵が当店で作っている貝合せの絵柄にもあり、ちょっと感激。

実は、貝合わせは紫式部の時代にはまだなかったようです。きれいな貝殻を集めて競い合う「貝合わせ」はあったようですが、源氏物語には今のような貝合せのことは書かれていません。

貝にはハマグリを使います。幸いにもハマグリの名産地桑名が近いので、ときどき桑名まで買いに行きます。自然のハマグリは写真の左のように黒っぽい薄皮におおわれています。これを薬品で溶かし、サンドペーパーで磨いたりして右のようなきれいな状態にします。その後、当店では本金箔を内側に押し(貼り)、絵を描きます。大きいのや小さいのまで色々です。お雛さまの前にこんな風に飾るととてもきれいで、楽しいお飾りになります。貝がたくさんあると、本当に貝合わせも楽しめます。販売中。

※源氏物語は平安時代(西暦1000年くらい)に紫式部によって書かれた世界初の長編小説ですが、印刷技術があるわけではないのでその後、多くの書写本が能筆家によって書写されました。この国宝絵巻も鎌倉時代に描かれたものと推定されています。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、生涯学習教室様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします

  • このエントリーをはてなブックマークに追加