連載 重箱のスミ ⑫

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三種の神器  その三  太刀

 ふつう、刀といえば時代劇で出てくる武士が腰に差している大小を思い浮かべます。他にも大きさや用途によっていろいろな種類がありますが、「太刀(たち)」と「大刀(だいとう)」はどう違うのでしょう。

 外見的には、時代劇の武士が腰に差している二本の刀の大きい方が「大刀」です。一方、男雛や、時代劇でも甲冑を着た武将が腰にぶら下げているのが「太刀」です。「差している」のと「ぶらさげている」の違いがあることからわかるように、装着方法によっての違いが一番大きく、鞘(さや)の拵(こしら)えが違います。美術館などで刀身を展示するときも、太刀の場合は刃を下に、大刀の方は刃を上にして展示したりします(必ずしもこの原則とおりではありません)。では、刀身そのものに違いはあるのでしょうか?

 太刀は基本的に馬上で甲冑を着た武士が振り回すために作られており、大刀より少し長いものが多いようです。(これも、平均的に少し長いという意味です。)

 太刀に限らず、日本刀は刀身に鍔(つば)や柄(つか)をつけたとき、柄がすっぽ抜けないように刀身の柄に収まる部分に目釘穴(めくぎあな)という小さな穴をあけ、柄を取り付けたときこの目釘穴に竹の目釘を通して抜けないようにします。この柄に収まるにぎりの部分を茎(なかご)と呼び、刃の部分と茎の境目辺りを区(まち)と呼びます。この茎に空ける目釘穴の位置が、太刀の場合には区から指四本、大刀の場合は指三本分といわれています。太刀と大刀の用途の違いによって位置を変えているのでしょうか、理由はわかりません。

 この穴に通す目釘には竹が使われます。真竹(まだけ)を燻(いぶ)したり油をしみ込ませたりしたものや、一番良いものは古い民家の屋根裏や天井で自然に燻された「煤竹(すすだけ)」といわれています。また、この目釘穴も通常は円形ですが、中には「瓢箪(ひょうたん)形」や「猪目(いのめ)形(※)」などがあって、楽しめます。ときには目釘穴が三~四個空いているものもあります。頻繁に用いたり力づくで用いたりするための刀では目釘を数本にしたようです。有名な首切り山田浅右衛門(※)の刀などは絶対に抜けたりしないよう目釘も多かったといいます。

(※)猪目

 ハート型の文様。火除け、魔除けとして神社建築や鎧兜、太刀などにもよく使われます。猪(いのしし)の目がなぜハート型なのかわかりません。(図)

 兜のクワガタにつけられた猪目

(※)首切り山田浅右衛門については次回!

 

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