甲冑 兜 ~その十九~
鎧の逆板(さかいた)
逆板(さかいた)
鎧の背中を見ると、上から二段目の小札(こざね)一列はぶらぶらと動くようになっており、この真ん中につけられた金具=総角環(あげまきかん)に、両側の大袖からのびた房紐が美しく結び付けられ(総角結び)ているものがあります。両袖からの紐は「水飲みの緒」といい、うつむいて水を飲む時、両側の袖が前に垂れて邪魔にならないように結んだものです。目立たない部分ですが、「なぜ、ここだけぶらぶらしてるの?」と不審に思われる方もいらっしゃいますが、総角環をとりつけるために一列余分についているのです。(鎧の時代背景などによってついていないものもあります)
鎧や兜の周囲は、小札(こざね)という穴の開いた小さな長細い板に紐を通してつなぎ合わせることでできています。この紐のことを縅(おどし)と言います。色とりどりの絹糸や革紐で美しく、中には文様を織り出すように縅したものもあります。
通称小札ですが、平安、鎌倉のころまでは単に札(さね)と呼ばれていました。札は次第に小さくなる傾向があり、中世の札に比べて小振りなものを小札と呼んだようです。もともとは主に鉄製でしたが、重くて不便なので革製のものが室町時代には主流になりました。また、小さな一枚ずつものや、最初から一列にこしらえたものまでさまざまな小札が考案されました。節句用の兜や鎧には「和紙小札」というものがあります。実際の甲冑に和紙の小札があったかどうか不勉強でわかりませんが、恐らくは本来の革の代わりに節句飾り用に考案されたものではないかと思います。この「和紙」も、どんな「和紙」なのか、これからは検証される時代がくるかもしれません。節句用の飾り甲冑の場合、金属やプラスチックの小札に比べ、よくできた和紙小札では繊細な質感を表現することが可能です。
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