連載 五月人形の重箱のスミ 82

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甲冑 兜 ~その二十~

 兜の櫃(ヒツ)  ①

 

 本物の甲冑は櫃に納められます。鎧兜はふだんから着用しているわけではなく、イザというときに身につけて駆け付けなければなりませんので、わかりやすく、かつ、常に大切に保管しておくことが重要で櫃はそのための容れ物です。また、戦場に集まったとき、脱いだ甲冑がだれのものか一目でわかるように家紋を正面に大きく描いたりします。六本の足がついたものが多く、これは湿気から中を守るためで、正倉院のかたちと似ています。また、樽のように胴の中央がふくらんだものもよく見られます。節句などのときには、これらの櫃の上に甲冑を飾り、その姿が現在も節句飾りとして用いられています。兜だけの場合でも、同様に櫃の上に飾ります。最近の節句飾りでは、櫃を使わず板の上やしまうための箱などに飾られることがありますが、あまり縁起のよい感じは受けません。よく、櫃の正面に「前」と書かれたものがあります。これは、「臨(りん)、兵(ぴょう)、闘(とう)、者(しゃ)、皆(かい)、陣(じん)、列(れつ)、在(ざい)、前(ぜん)」という九字呪文の最後の「前」です。中国の道教からはじまり、真言密教でも用いられる「九字文」というもので、一文字ずつに意味が込められ、「前」は文殊菩薩や摩利支天を表すと言われています。それぞれに手指で表す「印(いん)」があり、「前」は軽く握った左手を右手で包むようなかたちが割り振られています。忍者が忍術を使うときの、二本指を立てた左手で右手の二本指を包み込む仕草も刀印という印のひとつです。右手が刀身、左手が鞘で、刀を鞘に納めるという意味だそうです。これをすることで、精神を集中させたりする効果が実際に認められているということです。

 

節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ

これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

※この記事の無断引用は固くお断りします。

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