連載 五月人形の重箱のスミ 90

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馬と虎 ~その三~

馬と武者

手作りの桐塑の胴体に越前和紙を用いて毛並みを

表現した馬です。足にわらじをはいています。

 

 一月七日の白馬(あおうま)の節会はその名が示すように白馬が中心の行事です。端午の節句でも最初は白馬が中心だったようですが、次第に足の速い馬、立派な体格の馬が珍重されるようになります。やはり、競走に勝つとか、乗ったとき堂々として見える大きな馬の方が喜ばれるのですね。

 江戸時代に入り、お節句に神功皇后などの人形や大将を飾るようになると、馬も一緒に飾るようになったのは必然です。神功皇后の人形の多くは馬に乗っていますが、このときも縁起にしたがって白馬です。武人にとって大切なものであると同時に、産まれてすぐに自分の脚で立つという強健さも好まれた要因のひとつです。

 なぜ、白馬と書いて「あおうま」と読むのでしょう。これには昔から色々な考察があります。南方熊楠は「十二支考」の馬の章で「白馬を『あおうま』とのみ訓みしは、『平兼盛家集』に『ふる雪に色もかはらで曳くものを、たれ青馬と名づけ初めけん、高橋宗直の『筵響録』巻下に室町家前後諸士涅歯(でっし=お歯黒)の事を述べて、白歯者と書いて『アオハ者』と訓ず、白馬を『アオ馬』というがごとしといえるにて知るべし。」(「十二支考」講談社学術文庫)と書いていますが、白=青の理由については触れていません。だれの考察か忘れましたが、降り積もった雪の影の部分は青く見えるところから白=青になったのではないかというのもありました。

 馬は人を乗せた状態で時速六十キロ以上で走ることができます。人が乗れる動物で最速です。馬の足は四本ですが、他の動物と違い、馬の足はスピードを上げるために独特の進化を遂げました。足の先にヒヅメがありますが、まさにこれは馬の爪で、ヒトで言えば中指の爪なのです。前足の場合、肘に見えるところはヒトの手首、そこから先は指なのです。つまり、馬は四本足の中指の爪で立っているのです。ときどき競走中にころんで足を折ることがあります。立つことのできなくなった馬は生きていくことができないのでその場で薬殺されることがあります。動物愛護の視点からはどう映るのかわかりません。苦しませないようにとの配慮からだと聞いたことがあります。とても繊細で賢い動物です。

 

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これまで、いくつかの和文化カルチャースクール様、ロータリークラブ様、徳川美術館様、業界団体様、中学の授業などでお話させていただいています。

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