甲冑(ヨロイカブト)職人のプライド
クワガタと龍

真鍮板にきざまれた羽毛の刻印
※この畳、龍鬢畳といいます。龍のヒゲのようなイ草を使っているから?

できあがった鍬形と
欄間職人の彫った龍頭(たつがしら)
兜のクワガタを手で作ります。金槌で硬く叩き締めた真鍮板に鍬形の輪郭を毛引きし、そこに鳥の羽の文様をひとつずつポンチで刻んでいきます。そして、輪郭にそって金バサミで切り取り、ヤスリなどで仕上げをした後、メッキを施します。これを兜にとりつけるのに一つずつ差込口をクワガタに合わせてこしらえますので、その差込口でなければ挿さりません。プレス機などで機械的に作ればあっという間に何百枚もできてしまう部分ですが、ちゃんとした節句品であろうとするとこうした作業でこしらえることになります。
木彫りの龍は欄間職人によって彫られます。複雑なかたちに彫られ、尾には剣がついています。南方熊楠はこれを「ヤマタノオロチの尾から出たというアメノムラクモノツルギを表しているのだろう」と言っています。そして口には必ずリュウビン(龍鬢)という口ひげがついています。多くのものが「木彫、本金箔押」と説明されていますが、その出来には大きな差があります。彫刻や本金箔押などはお客様にはわかりにくい部分ですが、ヒゲの有無は一目でわかる判断材料のひとつです。
ヘルメットにあたる部分は、十数枚の細長い鉄片を金槌で打って曲面(アール)を出し、矧ぎ合わせて半球形にします。これも機械的にプレス加工することで大きく費用を抑えることができます。
最も大きな差が出るのは「飾り金具」かもしれません。複雑な文様の飾り金物は、電鋳(でんちゅう)という方法で作られます。金属イオンを電気分解で型に付着させる方法で、複雑なかたちができるようになりました。これをアルミやブリキのプレス加工にすると、非常に費用が抑えられます。また、手作りの彫金もできますが、けた違いに高額になります。
鎧 兜には他にも革や絹糸を用いる部分など、多岐にわたるパーツがあります。ある程度のグレードを保ちながらお子様の節句飾りとして製品化するのに、素材や技法と常にせめぎ合いながらの仕事ですが、職人の矜持(プライド)が奈辺にあるのか、発注者、販売者の矜持も共に問われます。
節句文化研究会では、こうした 面倒臭いけどなんだか楽しい節句のお話を出前しています。カルチャースクール、各種団体、学校などお気軽にお問合せください。→HP最後のお問い合わせメールからどうぞ
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