当店四代目店主がお節句の本を書きました。雛人形や五月人形の説明本ではなく、「お節句とは何か」に真正面からとりくんだ本です。(A5 223頁) 商売として取り組んでいると、ともすれば忘れがちな「なんのために節句品はあるのか」の意味を歴史的にさまざまな文献を踏まえて探った内容です。
主に、節句に携わる方を意識して書かれています。人形屋、茶華道、お料理、呉服、建築・内装、カルチャースクールなどの方々のお目に触れれば幸いです。
ご希望の方はメールでお問い合わせ下さい。
当店四代目店主がお節句の本を書きました。雛人形や五月人形の説明本ではなく、「お節句とは何か」に真正面からとりくんだ本です。(A5 223頁) 商売として取り組んでいると、ともすれば忘れがちな「なんのために節句品はあるのか」の意味を歴史的にさまざまな文献を踏まえて探った内容です。
主に、節句に携わる方を意識して書かれています。人形屋、茶華道、お料理、呉服、建築・内装、カルチャースクールなどの方々のお目に触れれば幸いです。
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お雛様の前に飾られている三方に載った飾り花です。
お雛道具のお話です。画像にあるお膳(掛盤膳)と三方は江戸時代から当家で使っているものです。ひな祭りのときは、このお膳に実際にお料理を盛って供え、あとでいただきます。ご飯は画像のようにてんこ盛りに盛って、ちょこんと小さな蓋をのせます。三方には白酒やジュースを載せます。重箱(これは30年くらい前に買ったもの)にはお料理でもいいのですが、お菓子を入れています。お料理を盛っていないときは、掛盤などはこちらを正面に飾っていますが、お料理を盛ったときには、これはお雛さまに供えるものですので向こうが正面になるように飾ります。もちろん、お箸も添えて。(この掛盤はお雛様用に作られていますので、前後両方に牡丹の蒔絵が施されており、前後の区別はありません。)
さて、少々長くなりますがお付き合いを。
七段飾りをお持ちの方は、お道具の入っている箱を見ていただくと「掛盤膳揃付」とたいてい書いてあります。この「掛盤膳揃」とは、この掛盤と三方、菱餅、高杯(丸餅)のことを私たち業界はさしています。「掛盤膳揃付」とわざわざ断ってあるということは、「掛盤膳揃ナシ」があったということです。そうなんです。当家にあるように、掛盤膳や三方などは、かつては多くのお宅にお節句用に備えられていたので、お雛さまを揃える時に買う必要がなかったのです。お雛さまにお供えを盛る道具は、お雛さまに付属するものではありません。重箱もそう。昔はどこのおたくにも重箱はあったので、それを用いていました。では、「掛盤膳揃ナシ」の御道具揃をなんと呼ぶかというと、「嫁入り道具」といいます。つまり、タンス、長持、牛車、お駕籠などのことです。まさに、お大名のお姫様が嫁入りのときに持参したお道具のミニチュアだったわけです。
さて、話を戻しますが、このように掛盤膳にはお料理を盛る役割がありますが、近年のお道具には絶対にお料理を盛らないでください。最近のお道具類は日本製のものがきわめて少ないからです。水気のあるものや熱いものを盛ると、塗装が剥げる恐れがあります。そして何よりも、海外製の塗装にはどんな成分が含まれているかわかりません。日本製ならば、製造者の健康面も含めてかなり安全性は高いのですが、海外で作られているものはその点がかなり不安です。まして、盛ってある料理などを万一お子様が口にしたら・・と考えると絶対に食べ物は盛らないでいただきたいのです。本来は、お膳類は実際にお料理を盛るものですので、お供えをされたい方はちゃんとした人形店か和食器のお店でお求めください。
2月5日から徳川美術館様で「雛まつり」展がはじまります!
写真の14代慶勝公の正室、矩姫君の有職雛が衣裳を新調して初お目見え。
また、今年もロビーには、当店とっておきの現代のお雛さまを展示します。
わが国、というより、世界最高峰の人形の展覧会、どうぞお運びください。
(平時でしたら、ヨーロッパからツアーが組まれるほど注目される展覧会です。)
今回も、お雛様の良し悪しとは直接関係のない、重箱のスミ的な事柄です。男雛の襟の☓と+。装束の着付けには現在、高倉流と山科流があって、即位礼など宮中行事等の際の皇室の方々の装束を、衣紋に携わる方々がこの二流によって着付けられます。その流派が一目でわかるのがこの☓と+です。こうした装束は襟口を「トンボ」と呼ばれる紐をまるめたものをボタンのようにして留めるのですが、その紐をとめる綴糸が☓になっているのが高倉流、プラスが山科流です。そして、人形ですのでその綴糸自体がないものもあります。二つの流派には、他にもたくさんの違いがあります。
人形の良し悪しとは関係がないと書きましたが、有職にのっとってこしらえようとすると、とても重要な点でもあります。ここを☓にしたときは、他の点も高倉流に仕立てなければなりません。お雛様って、けっこう奥が深いものですね。
「ひねり」
女雛の衣装。白い小袖、赤い袴の上に最初に着る一枚が単(ひとえ)です。この単にごくまれに端がコヨリのように丸く巻かれたものがあります(濃い緑の単)。ヒネリといいますが、実際の装束もこのようにひねられています。徳川美術館に展示されている古いお雛様の単部分はほとんどこのようにひねられています。女雛だけでなく、男雛も、供の人形も単の端はこのようにひねられています。
人形でこれをするのはたいへんなので、ほとんどが端を二つか三つ折るか、全体を二つに折って(単ではなくなってしまいますが)着せ付けられます(赤い単)。さらに、袖口を柔らかく見せるためか、手首部分を少し内側に折り込んで着せる場合があります(黄緑の単)。実際の装束ではないことですが、袖口を柔らかく綺麗に見せるためにしています。
お雛さまでお人形の次(?)に大きな要素となるのは「屏風」です。お人形の背景となり、面積も大きいので飾ったときお部屋の壁面などとの映りにも影響があります。
色や柄だけでなく、その「作り」にも多くの種類があります。
「作り」には大きく分けて2種類あります。簡単に言えば、金属の「チョウツガイ」を使ってあるかどうかです。
本来、屏風というのは紙や布を木枠に「表具」してこしらえられ、一面ごとのつなぎ目は「紙蝶番(かみちょうばん)」という特殊なつなぎ方がされています。本式の紙蝶番は反対側にも曲げることができます。そして、こうした屏風は表具師によってこしらえられます。周りの黒枠は、上端の角は縦棒と横棒が斜め45度に切られて組まれ、下端は切り口直角のままドン付けされます。内部は障子のような枠に下貼りをした上に表紙が貼られ、中は空洞になっています。
一方のチョウツガイ屏風は、主にベニヤ板やボードに色柄を塗装したり紙などを貼り付けたものをチョウツガイでつないだもので、「表具」の技術が要りません。主に木工屋さんでこしらえられます。
どちらが良いかはお客様と販売店の判断に委ねられるもので、好みや飾る場所、価格にもよりますので一概に申し上げることはできません。
当店ではあまり用いませんが、現状では大半がこの金属チョウツガイの屏風になっています。
ふすまや障子、掛軸など表具師の活躍する場面がどんどん少なくなっているのが現状です。文化を支える技術、技術を支える文化、技術と文化は表裏一体のものです。節句行事が伝統文化であるなら、その文化を伝えるためにも節句飾りにはこうした技術を少しでも採り入れ続けたいと思っています。
男雛の肩です。最初のはスパッときれいに折られています。
2,3は肩のところをつまんで、丸く折られています。
2,3の方は束帯装束の着付けに準じて「衣紋襞(えもん
ひだ)」を再現しています。肩の線は水平に近く、折り目は
わざわざ丸く襞をつけてあります。どちらが人形として
きれいかはお客様が判断されればいいのですが、「わざわざ」
そうしてあることにご注目下さい。