2009年11月アーカイブ

美しい名古屋~三   夢の浮橋

 浮橋といっても浮いていません。御園橋という、当店の100mほど北の外堀にかかっている橋です。

 御園座の西側の通りの北端にあり名古屋城内に通ずる道で、かつてはメーンストリートの一つでしたが、現在は一筋東の伏見通りにメーンストリートの座を奪われひっそりとした小路になってしまいました。おかげでこのように静かな橋のたたずまいを今に残してくれています。石垣の向こうに見えるのは愛知県図書館で、周囲の風景にとけ込んだ美しい建物です。

 20年くらい前まではこの橋の下を名鉄瀬戸線が通っており、ちょうどこの橋を過ぎたところが「慶雲橋」という終点の駅でした。ここに生まれ育った私たちにはまさに昔の夢のような橋となりました。

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冬はつとめて

 布団のあたたかさから脱出するのに気合いが必要な季節になってきました。当店では、毎朝、店にある火鉢に炭をいれます。いつごろからあるのかわかりませんが、私のものごころのついた頃にはすでにあり、どうやら戦前からのもののようです

 エアコンで店内はそれなりにあたたかくはしていますが、炭火のあたたかさは手のひらから身体の中までしみ通ってくるような感じがします。

 雛人形には炭火の暖かさが似合います。

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雛人形の袴

 夕方、できあがった雛人形を職人さんが持ってきてくれました。いろいろなお話をしている中で雛人形の袴(はかま)の話題になり、この話題だけで2時間近く話し込んでしまいました。

 男雛は通常束帯(そくたい)という装束なのですが、その袴は下着の上に「大口袴」をはき、その上に更に「表袴(うえのはかま)」というものをはきます。通常、雛人形は表袴あるいは大口袴の下に裾をしぼった「括り袴(くくりばかま)」のような袴を着せます。これは、上に着る袴の裾が開いているために、座ったかたちの男雛の足が見えてしまうのをかくすためです。脛が見えては格好が悪いですから。問題は表袴なのですが、通常の袴とは形状が違うために実際に表袴を作って着せることがとても困難なことです。実際に本物の通りに袴を作って着せたとしても、人形としての善し悪しとはあまり関係がないのにどうしてもこだわってしまうのは職人さんの性(さが)でしょうか。でも、そういう考えをする職人さんのことはけっこう好きです。

 最後に「知らない人が聞いていたらなんというオタクたちだろう、と思われるでしょうね」と言われましたが、素人の方がのめりこむのがオタクでわれわれはプロなのだから、オタクではなくて知っていて当たり前のことなのではないかと二人で納得しました。しかし、偉そうなことを言ってもまだまだ知らないことは山ほどあるのです。

 写真は男雛の裏側です。これはかなり凝ったつくりになっていますが、こうなってさえいれば良い人形というわけではありません、念のため。

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黄葉

 秋の紅葉というと「紅葉」がふつうですが、これは「黄葉」です。毎年この季節には美しい景色を作り出してくれます。

 日銀前歩道橋から名駅を望んだ景色で、向こうにタワーズが見えます。今年はちょっと少な目ですが、銀杏もたくさんでき、早朝の車の少ない時間帯にはには多くの方がギンナン拾いに来られます。

 油絵の具でこの色は「オーレオリン」が近いのですが、これは「月の光の色」という意味だそうです。ゴッホも黄葉を描くのによく使った色で、黄葉がきれいだと感じるのは洋の東西を問わないようです。しかし、この銀杏の名前になぜ「銀」が付くのか不思議です。

  DSCF6007.JPGまだ1~2週間は広い桜通を覆い隠すような黄葉が楽しめます。

雛屏風

11月に入ると、5~6月に注文した雛人形や雛道具類が毎日のように入荷してきます。昨日は京都の屏風師さんから雛屏風が到着しました。

当店ではお雛様をお求めいただくとき、まず、雛人形(男雛女雛一対)本体をお選びいただきます。その後で、そのお人形に合うお屏風や雛道具、官女さんや五人囃子などを、お飾りいただくスペース、お好み、ご予算など考えながらお組みしていきます。

お雛様で一番大切なのはもちろん雛人形そのものなのですが、次に大切なのは屏風かもしれません。お飾りいただく場所やしつらえにもよるのですが、雛人形と屏風がぴったり合うとワインと料理のマリアージュのような、双方の相乗効果で実に美しい雰囲気が生まれます。

写真は上質の鳥の子和紙にうっすらと紫や淡黄の霞がかけられ、全体に金箔の砂子が振られた屏風ですが、少し渋めのお雛様をとてもきれいに演出してくれています。ご家族だけで拵えておられる屏風師さんなので、製作数にも限りがあります。数軒の職人さんから作られてきますが、いずれも人形を美しく見せることに心をくだいた筋の通った屏風です。

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矢の調度

  DSCF5989.JPG 弓矢は武士にとって第一の道具でしたので、弓矢のことを「調度」と呼んだそうです。戦国時代には槍が第一とされ「一番槍のほまれ」などという言葉も生まれましたが、槍のことは「道具」と呼ばれたようです。

 その大切な「矢」ですが、本来は鷹の羽根を用い、羽根の一番先のものが良いとされていました。羽根の模様にも「雪白」「本黒」「中白」「切文」「うすべお」「かすぼ」など多くの名前がつけられ、大切に扱われていたようです。

 当店の破魔弓にも多くの矢羽根が使われます。ワシントン条約により今ではまったく手に入らなくなってしまった羽根も、高級品には大切に使っています。鷹類の羽根だけでなく、金鶏、銀鶏、フクロウ、七面鳥、染め矢など商品によって何種類もの矢羽根を使い分けます。羽根だけ見ていてもきれいです。

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帚木 (ははきぎ)

今日は朝から雨です。

当店のすぐ近くにケヤキのトンネルのような美しい路があります。

雨の日はことにしっとりして、ゆっくり散歩していると名古屋の真ん中にいることを忘れてしまいそうです。

ここは、裁判所前の通りです。

中日新聞から県庁へ向かう路で、当店から県庁まで行き外堀沿いに回ってくるとたっぷり小一時間のコースです。この散歩道のいいところは周囲に商店が一軒もありませんので、実に静かな点です。雨のアスファルトを走る車のタイヤの音だけが静かに木々の葉を振るわせる程度で、音楽も人の話し声もほとんどなく、ネオンや看板もありません。

遠くからは見えるのに近づくと見えなくなってしまう木、帚木。ケヤキはほんとにホウキを逆さにしたような枝振りで、こんなに美しいトンネルを作って見せてくれています。春の新芽のころもいいのですが、秋の雨の日もとても風情があります。

雛人形や羽子板などだけでなく、この周辺の私の好きな、きれいところもときどきご紹介します。

名古屋はほんとにきれいなところがたくさんあります。

 

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羽子板

11月になるとそろそろ破魔弓や羽子板飾りのお客様、お雛様のお客様がいらっしゃいます。お正月が近くなってきたな~と実感する季節です。

当店は100年以上にわたり破魔弓・羽子板をここで作っていますが、昭和30年代頃から名古屋市内外にたくさんのメーカーができ、全国の大半を製造する産地だったのですがここ十数年で市内には再び当店だけになってしまいました。まあ、元に戻ったと思って、相変わらず昔からあるスタイルを守って作り続けてまいります。

羽子板の職人さんは戦前はほとんどが東京・浅草橋付近に集中していたのですが、戦後、多くの方が埼玉県に居を移され、今でも都内で仕事をしておられるのは数軒になってしまいました。

羽子板は、その言葉の由来からしてはっきりしていなくて面白いのですが、お嬢様の初めてのお正月の御祝いとして、また、お正月のしつらえの一つとして華やかできれいなものです。毎日、ご注文に追われて、最も忙しい時期です。

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