2016年3月アーカイブ

端午の節供 3

 端午の節句は子供の日ではありません。それは、桃の節句は耳の日ではありません、というのと同じような意味です。日にちはたまたま同じですが、意味の違う行事です。
 五月五日が子供の日に制定されてから、端午の節句は国民全体の祝日から子供の祝日に変わってしまったような気がします。

 かつて、端午の節句は子供の有無にかかわらず、また、男子の有無にさえかかわらず、各家庭で祝われる節日でありました。それはお正月が子供の有無にかかわらず祝われるのと同じ意味なのです。現在でも、各地の旧家では五月五日(それは往々にして旧暦の)に菖蒲を屋根や室内に飾り、座敷幟や甲冑類、神功皇后の人形などを室内に飾ります。新しい年の平穏を祈るお正月と同様、夏に向かい田植えなどの農作業のはじまるときであり、また、季節の大きな変わり目にあたって健康と豊作を祈る、最も大切な節日でありました。それは等しく日本の人々が祝い、祈る日なのです。
 武家では、ひな祭りに対応して男子の節句とされてきましたが、一般庶民の間では近代に至るまで国民全体の節句であったはずなのに、最近では本来の意義が見失われてしまったような感があります。

 人形店で販売される端午の節句の飾りもずいぶんと変わってしまいました。それは「端午の節句の飾り」というより、「子供の日の飾り」といった方が当たっているようです。子供用に買われた鎧や兜、赤ちゃんが子供でいる期間はせいぜい十年かそこら、「子供の日の飾り」でよければ、クリスマスツリーと同様にそれくらいの期間、もてばいいのかもしれません。
 ヨーロッパのL社のような稚拙な陶器の人形でも、小さくて雑巾で拭け、ブランド品ということで売れているようです。節句の祝いであれば、昔は割れ物は「縁起が悪い」として扱われなかったものですが、これも時代なのでしょうか。限定数千体というのも、日本の職人が作る人形から比べれば桁外れの大量生産数です。同じくらいの価格で、世界中の人形師が価値を認める、「限定数体」しか作られない人形がお求めいただけるのに・・・というのは如何に日本の人形師や人形店が宣伝下手か物語っています。

 ともあれ、当店では大人になってからも、おじいさんになっても飾っていただける節句飾りをご用意しています。一般の人形店さんとは店内のおもむきがずいぶん違うかもしれません。永くお飾りいただくためには、永く作り続けられてきたものでなければならないと考えているからです。
 端午の節句にお子様のご成長を祈り、祝うにふさわしいものをお選び下さい。
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005.JPG                         限定数体、頭師=川瀬猪山、結髪師=井上正幸、着付師=小西清甫
                  正絹本金西陣織物装束の武者人形。
                  屏風は京都北村松月堂製の手描き陣幕屏風です。










徳川美術館

 今年も、徳川美術館さまでお雛さまとお節句をテーマにお話をさせていただきました。たくさんの方が熱心に聞いてくださり、また、多くのご質問をいただいたりして楽しい小一時間でした。
 徳川美術館さまは、人形屋にとって「聖地」ともいうべき場所で、学芸員さんたちもいらっしゃるのに私でいいのかしらんと思いながら、人形屋のおやじと学芸員のみなさんとは、また違うとらえ方もあるのだろうと思い、あまり堅苦しくならないよう、しかし、少し専門的なことも交えながらお話をいたしました。ご依頼があればなるべく受けさせていただくようにしていますが、繁忙期以外はそういったご依頼も少なく難しいところです。

 
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端午の節供 2

 「節句」という言葉はそんなに古い言葉ではなくて、江戸時代終わりのころの言葉のようです。奈良、平安時代には「節(せち)」といって、正月節や端午節のことを指していました。そのときのお食事を用意する人たちが、そのお料理のことを「おせち」といったのが今でも使われる「おせち料理です。
 節会とも呼ばれ、そのときに用いられる祈りの対象に供えられる供物を「節供」と呼び、いつのまにか節会の行事そのものが「節供」と呼ばれるようになりました。「節句」という書き方は江戸時代の後期に、だれかが書き間違えたのが広まった、とも伝えられています。

 「日本では万物に神が宿る」という考え方があり、節句の象徴となるものは神性を帯びたものとなります。それはご両親、御祖父母様が籠めた祈りとともに贈られものなので、まさに神仏の御加護を得られるためのものでなければなりません。
 おもちゃと節句飾りとではそこに大きな違いがあります。祈りを捧げるような気持ちにさせるものである必要があります。
 お雛さまの前に飾られる三方や菱餅なども、お雛さまに供えられているものなのです。少し昔には五月節句飾りにも三方や柏餅、ちまきが飾られました。これは鎧・兜やお人形に供えられたものなのです。そうした対象を通して神仏にお子様の成長を祈るのが節句行事です。祈りの対象となりうる節句の調度品でなければなりません。ちゃんとしたお節句飾りはお子様の一生を通じて、人生の節目節目に勇気と自信を与えてくれます。
 そんな節句飾りをお贈りいただきたいとわたしたちは考えています。
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名古屋ウィメンズマラソン交通規制

 今年も名古屋女子マラソン(ウィメンズマラソン)が、3月13日(日)開催されます。
 当店のすぐ東側を南北に走る伏見通りが通行禁止になります。これに伴い、名古屋高速出口「丸の内」と「白川」が朝10時ころから午後3時ころまで閉鎖されます。ご注意ください。
 高速「錦橋」出口はだいじょうぶですので、降りてすぐ堀川東沿いの道からお越しください。
 伏見通りは東西の横断が難しくなります。東の方からお越しの方は大回りして江川線か堀川沿い(木挽町筋)をご利用ください。
 詳しくは「名古屋ウィメンズマラソン」のホームページでご確認下さい。

五月人形の考え方

 明日はひな祭り、人形店ではこの日を境に五月人形を売り出します。
 五月人形をお求めの方が一番悩むのは、どんなものを購入したらいいかということに尽きると思います。ほとんどの方が「初めて」購入するものですし、初めて人形店に足を踏み入れるという方も少なくありません。
 一方で、ネットで情報を検索しても「どんなものを購入したらいいか」という疑問に応えているサイトはありません。ほとんどが業者のHPか、購入されたお客様の感想だけだからです。

 当店も人形店ですので、当店にご来店いただきたいという気持ちは当然あります。売れなければ生活が出来ませんし、「売れるもの」を扱いたいという気持ちはあります。しかし、そんな中でも「当店では扱わない」というものがあります。そんな五月人形を少しご紹介します。

(1){戦国武将の鎧兜}  例えば今年の真田丸にちなんだもの。六文銭の印は家紋ではなく、真田の者であることを示す「武具紋」です。「三途の川の渡し賃を付けてあるから、勇敢に戦って死んでこい」という意味の印です。その兜をお子様の初節句に贈っていただくことは、当店にはできません。
 その武将をきわめて尊崇しているとか、そのご子孫の方はいいかもしれませんが、有名な戦国武将とは反面、たくさんの敵をやっつけた人でもあります。その敵方から見ればその武将は祖先の憎い仇です。そんな重い「厄」を最初から背負った鎧・兜をお子様のお守りとして飾ることは、昔からありませんし、節句の意味を考えれば、してはいけないことのようにも思います。

(2){一部の着用兜} 節句の鎧兜は着て遊ぶものではありません。着るためには、軽く、危なくないように作られなければなりませんので、きわめて玩具に近いつくりになります。 さらに、それを着用できるのはせいぜい2~3年間、つまり数回しか着ることはありません。節句の調度品としてちゃんとしたものをお求めいただいた上で、更におもちゃとしての兜(鎧)をお求めになるのが「着用兜(鎧)」の正しい考え方です。写真館さんへ行くと、撮影用にお子様の鎧兜を用意しているところがあります。撮影料金さえ払えば、タダで貸して頂けます。
 もちろん、着用できるちゃんとした節句の調度の鎧・兜もあります。当店でも承りますが、だいたい百万円からになります。

(3){流行のもの} お節句の調度は子供用ではなく、大人になっても飾るものです。流行に左右されるものではいけません。さらに、流行のものは各部品の汎用性が低いため、つくりの割りにかなり割高です。
 ① 「収納飾り」がスーパーさんなどを中心に5~6年前にずいぶんはやりました。現在はかなり下火になりましたが、鎧・兜の櫃(ひつ)を大きくして、中に兜だけでなく屏風や弓太刀までも入れられるようにしたものです。兜に比べ、きわめて小さな弓太刀を添え、箱と同じ柄の簡素な屏風(ベニヤ作り)がつけられます。人形屋の奥さんたちはこの「収納飾り」をたいてい嫌います。それは、重いからです。大きな収納の箱は、それだけでけっこう重くなります。収納飾り以外は収納できないように思われるかもしれませんが、すべてそれぞれの箱にきちんと収納でき、ひとつの箱に収納することも可能です。ただ、「立方体」の鎧・兜、「平たい長方形」の屏風の箱、「細長い」弓太刀の箱と、形状が違いますので、別々の箱にした方がしまうスペースはかなり少なくてすみます。
 ② 「ケース入り」も、飾るのに簡単でコンパクトと思われがちですが、実は、しまうときも同じ「かさ」ですので、最もかさばる飾りです。ホコリがかぶらないとおっしゃる方もいらっしゃいますが、せいぜい数週間飾るのに、ほこりの心配はいりません。持ち込まれる修理で一番多いのが、このケース飾りのガラス割れです。箱にしまっても、重いものを上に載せると割れます。さらに、多くの場合ケースにくっついているので、兜を触ることができません。くっつけるためには「軽い」ことが重要になりますので、あまり良質な兜は用いられません。価格の半分はケース代金(ガラス代)という場合が多くなります。
 猫を飼っておられるお宅では、このケースが必要になることがあります。その場合は当店ではどのお飾りでも、別途、ケースをお誂えします。

(4) 「陶器のもの」 海外の著名なメーカーの節句飾りがあります。季節の飾りとしてはいいものかもしれません。しかし、わたしたちは節句のお祝いに「割れ物」を使うことは昔から「縁起が悪い」として使いません。季節の飾り物として飾られるなら、瀬戸、多治見、常滑などの産地で、海外の稚拙なものに比べはるかに優れた作家の作品をかなりお値打ちにお求めいただけます。

 他にも積極的には扱わないたぐいのものがありますが、「なんのためにお求めいただくのか」を考えればおのずと出てくる結論のものです。
 お客様は「初めて見て、初めて買う」ものです。ほとんど知識や経験はありません。それだけに、店側は先様のご実家のご両親様や、お祝いにいらっしゃったお友達、ご親戚、知人の方々にほめていただけるようなものをお勧めしなければなりません。先様のご両親に「??」と思われたとしたら、それは購入されたお客様の責任ではなく、販売したお店の責任なのです。

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