2016年4月アーカイブ

端午の節句 15

 お客様宅で撮らせていただきました。こんな風に飾っていただきたいという鎧飾りです。鎧だけでも格調高いのですが、馬を添えていただくことで華やかさがうんと増しました。その横に熊の木彫りがあったりして、金太郎さんも飾りたくなります。お子様も今年はまだおわかりにならないでしょうが、来年からはとても喜んでいただけることでしょう。そして、五十年後、八十年後でもご家族の思いと共に飾っていただける節句飾りです。
awata-yoroi.JPG

端午の節句 14

 お客様宅で撮らせていただきました。十数年前にお求めいただき、今も毎年建てていただいています。手染め、木綿の武者幟、鍾馗旗、それにこの向かい側に同じく木綿の鯉幟です。まったく色あせることもなくきれいに建っていて、嬉しくなります。近所の幼稚園のお子さんたちも見学に来てとても喜んでいて下さるそうです。
musyanobori.JPG

端午の節句 13

 ほんの数十年前まで当たり前にあった「御座敷幟(ざしきのぼり)」です。今、これを扱っているお店は全国でもほとんどなくなってしまったようで、関東、関西からもわざわざお求めにいらっしゃいます。東京の大きなお店で「御座敷幟はありますか?」とお尋ねになったら、名入れ旗を出されたという笑い話のようなことがあったとお客様から聞かされました。すでに「座敷幟」という言葉まで業界の間でも忘れ去られてしまったようです。
 これが「御座敷幟」です。このようにお客様の御定紋を染めさせていただきました。竿先についている小旗には赤色で母方の御定紋を入れることもあります。
 幟は男の子が誕生したことを天に知らしめよとばかりに昇らせるもので、中日新聞に掲載されている猿猴庵にも名古屋本町通りにずらりと大きな幟が並んでいる端午の節句図があります。これを室内の飾りにも採り入れたもので、七本立て、九本立てなど豪華なものが考案されました。多くの絵師がこの幟旗に滝や波千鳥、鍾馗などを描き、当店にも小田切春江の描いた幟旗が残っています。
 この前に鎧や兜、大将を飾り、馬や虎、太鼓に三方八足などを添えます。
 端午の節句はこうでなくちゃというアイテムのひとつです。

zasikinobori-1.JPG

端午の節句 12

 30年ほど前にお求めいただいたお客様の兜飾りです。ご無理を言って写真を撮らせていただきました。
 素晴らしい兜です。30年ほど前のものですが、きわめて美しい状態が保たれています。「良い」ものということはこういうことだと改めて感動すらおぼえました。職人は既に亡くなられて、同じレベルのものをつくることは叶いませんが、現在の職人さんたちの技術もなんとか残していかなければと心底思いました。
 「残す」ということは、私たちが毎年きちんと製作をお願いして仕入れるということです。そしてお客様にきちんとご説明をし、信用を得、買っていただくということです。高いだけのものはたくさんありますが、私たちプロの目で見て「良いもの」はそんなに多くはありません。良いものはそれなりにお高いものですが、お高いものすべてが良いものとは限らないのです。良いものはそんなにたくさんできるものではありません。デパートやネットに出てこないのはあたりまえ。一般のお店では名前すら知られていない職人はかなり多いのですが、「ネットで探しても名前が出てこない」という理由でまがい物ではないかと思われるお客様もいらっしゃいます。ほんとうに良いものはネットには出てきません。

 お客様も、その時は高い買い物と思ったけれど、今にしてみれば本当に良かったと喜んでいただきました。節句品というのはこうでなければ、という見本のような兜飾りです。
 
 兜は甲真、松月堂の本表装箔押屏風、黒檀製短檠を添えてあります。

kousin uekara.JPG
kousin upup.JPG
















端午の節句 11

「鎧着若武者」
 鎧を着たお人形の場合、お人形本体をこしらえる人形師と、甲冑をつくる職人の力量が合っていることが大切です。
 人形師・幸一光は頭(かしら)の表情はもちろん、全体の配色・デッサンがきちんとしていて、雄山の甲冑を得てきわめて完成度の高い作品に仕上がっています。弓太刀を携え、鯉幟を添えて華やかなお節句飾りです。特殊な紐蝶番の屏風がお人形を引き立てています。
 サイドボードやベビーダンス、床の間など場所を選ばず広さも多少は調整できる毛氈(もうせん)でのお飾りです。
 十九万八千円ほど、幅は50~65cmです。大きさの目安に文庫本を添えました。
seiun-musya.JPG

端午の節句 10

こんな可愛らしい節句飾りもあります。
幟(のぼり)は昔から節句飾りの寧ろ中心的なもの。それに兜をかぶった可愛らしいお人形、手には菖蒲と、端午の節句のすべての要素がこめられたお飾りです。
 八万五千円ほどで、幅45cmの大きさです。
 ※大きさ比較のため、右に文庫本が添えてあります。
satuki-kaze.JPG

端午の節句 9

(当店としては)あまりお勧めしたくない節句飾り パート4。
流行の節句飾り、例えば収納飾りなど数年周期で飾り方、屏風や台などのかたちが変わり10年もすると過去の流行品となるもの。

{収納飾り}
 まず、この言葉からすると他の節句飾りは収納できないような印象を受けますが、どんな節句飾りでも収納はできるようになっています。
  ほとんどの鎧兜は足のついた櫃(ヒツ)に入り、屏風や弓太刀、提灯、台などが飾る部品として付いています。収納飾りの場合は、この櫃を大きな足のない箱に して屏風や弓太刀を箱に入るよう、ごく小さくしたものです。とくに弓太刀など本体の鎧兜に比べてきわめて小さくちゃちなものになり、格好がよくないので最 近は廃れつつあります。
 屏風や弓太刀、台などを「部品」と書きましたが、それらは必ずしも必要なものではありません。飾る場所、収納のことを第一に考えるのなら、屏風や台、弓太刀はやめて、本体だけを飾られた方がうんと良いものをお求めいただけます。

  節句飾りはお子様が五十才、八十才になっても飾っていただけるものでなければなりません。少なくともちゃんとした節句品の業者であればそう考えています。 赤ちゃんのときにお求めいただくことが多いので、赤ちゃん用品、あるいはクリスマスツリーと同類の装飾品のように考えられがちですが、お子様の生涯を通し て節句の調度となる調度品です。ですから、流行の品であってはならないというのは当然のことなのです。
 私も毎年全国のメーカー、職人、問屋さん の見本市を回ります。さまざまな「新製品」が発表され、そのご苦労はたいへんなものと思いますが、永く愛されるものはなかなか出てきません。やはり、これ まで何十年、何百年と残ってきているものは、長い年月磨き続けられてきたものですので普遍的な美しさがあります。

kabuto.JPG
こんな風に兜だけ飾り、菖蒲の花活けなど添えていただければ上品な節句飾りになります。

端午の節句 8

(当店としては)あまりお勧めしたくない節句飾り パート3。
「もう買ってしまったのに」というお客様、申し訳ありません。「当店としては」ですので、絶対やめた方がいい、というものではありません。それなりの利点も当然ございますので悪しからず。

{ケース入り節句飾り}
 「コンパクトで、出し入れ簡単、ほこりもかからない」という利点があるようにいわれます。その中でひとつ、誤解があります。それは「コンパクト」という点です。コンパクトというのを「小ぶりな」とか「かさばらない」という意味でおっしゃっているのなら、それは大きな間違いで、中身の割りに一番かさばるのがこの「ケース飾り」です。他の飾り方のものは、少々手間はかかりますが飾るときに比べ、しまったときはその半分くらいのかさですみます。これに対し、ケース入の場合は飾るときもしまったときも同じかさなのです。
 また、ケース飾りの場合は比較的廉価なものが多いのですが、その価格の中でケース代(ガラス代)が大きな割合を占めます。大体、30~40%前後がケース代にかかってしまいます。廉価であるために、また、ケースに固定するために、軽く(プラスチックやボール紙等の軽い材料で)、不要な(見えない)ところは省略してつくられます。ときどき、「かさばるのでケースから中の兜などを取り外して飾りたい」 と持ち込まれる方がいらっしゃいますが、多くの場合兜の後ろ側、裏側などが省略してあり、ヒツもきちんとしたふたのついた箱になっていないことが多く、中身だけでは飾れないことがほとんどです。
 当店では基本的に販売していないのですが、修理に持ち込まれるので一番多いのが他店様で購入されたこのケース飾りです。なにぶんにも大きいので、しまったとき上に何かを置き、上面のガラスがよく割れます。ふつうのガラス屋さんでは2ミリガラスを扱うところはほとんどありませんので、断られるか一枚1万円位とられます。当店のように修理用に2ミリガラスを常備している人形店はそんなに多くありません。

 それでも、「猫を飼っている」、「一年中飾っておきたい」などの理由でケースをご所望される方にはケースをおあつらえします。最初からケースにくっついているものではありませんので、ちゃんとした鎧兜でお作り致します。ご希望によっては、やや割高ですが、割れないアクリルガラスでお作りすることもできます。

端午の節句 7

お勧めできないお節句飾り パート2
前回ブログに引き続き・・・

{着用鎧・兜}
 かわいいお子さんに勇ましい鎧や兜を着せたい、という気持ちはよくわかります。ここで言う「着用」というのは、「実際に着られるくらい大きな鎧・兜」ではなく、「小さなお子さんが着るためだけにつくられたおもちゃの鎧・兜」という意味です。
 一般に「着用」として販売されているものは、ほとんどがお子様が着て危なくないように「軽く」「けがをしないよう角がなく」、比較的廉価に(着れば傷が付いたり壊れたりしますので・・・)こしらえられています。いわばコスプレの衣装です。
 これまで繰り返し述べてきたように、端午の節句はお子様のおもちゃを飾ることではなく、お子様の「厄除け」「形代(かたしろ・身代わり)」として甲冑や人形を飾ること、それによって神仏に祈りを届けることなのです。コスプレ衣装ではいかがなものかと思います。着用鎧・兜の正しい使い方は、お節句用の飾りはきちんとしたものをご用意されて、その上で別に写真撮影用として着用鎧をご用意されてお子様に着せるというものでしょう。
 着用できるくらい大きな鎧・兜は昔からあります。それと昨今の着用鎧・兜はまったく別物で、昔のものは四~五才では重く、角が立っているので危なくて着せることはまずありませんでした。
 お雛さまに菱餅やひなあられなどをお供えしますが、端午のお節句の場合は粽や柏餅を供えます。これは神棚にお餅やお酒を供えるのと同じで、お子様の形代である節句飾りとともに八百万の神々に祈りを聞き届けてもらうためのものです。節句のお祝いのときにはお子様の健康なご成長を願い、しまうときにも一年の感謝をこめてお供えをしてください。それにふさわしい節句飾りであることが大切なのです。もちろん、お供えしたあとのチマキはみんなで楽しくいただいてくださいね。

端午の節句 6

 あまりお勧めできないお節句飾りを数回にわたって書こうと思います。それは、「節句」の意味、ご両親、祖父母様がどんなお気持ちで贈り、飾り、祝うのかを考えたとき、自然に導き出されることのように思います。

{戦国武将の甲冑}
 戦国時代の名将というのは当然、立派な方々なのでしょうが、反面、よりたくさんの敵を滅ぼした方々でもあります。つまり、栄光の大きさの分、同じだけの厄を背負った方たちともいえます。その方々の甲冑を飾るというのは、節句の大きな意味のひとつ「お子様の厄除け」から逸脱しています。
 また、鉄砲での戦いが中心ですので鉄板でおおわれた形のものが多く、彫金や縅絲(おどしいと)など美しい甲冑はほとんど見あたりません。
 「美しい甲冑」と書きましたが、鉄砲が使われる前の時代の甲冑、それは平安、鎌倉時代にさかのぼりますが、その時代の甲冑は世界中の美術愛好家から「世界で最も美しい武具」と評されています。第二次大戦後、欧米の占領軍が神社などに保管されているその時代の甲冑を見つけ、たくさんの甲冑が持ち去られました。東北や瀬戸内など人里離れた場所の甲冑は幸いにして見つからずに残り、現在、国宝として保管されていますが、ボストン美術館などにはその何倍もの国宝級の甲冑があり、また、個人的に売買されてどこにあるのかわからなくなってしまったものも夥しい数にのぼるといわれています。それらはほとんどが子供の成長や出世を願って奉納された甲冑です。その心は、現在の子を持つ親と何ら変わるところはありません。実戦に使うというより、美しい甲冑を奉納し、神仏の御加護を得るという節句の本質的な意味のものなのです。
 現代では、まさか本物の甲冑をつくる訳にはいきませんので、節句品として購入されるわけですが、できれば、「新しくお子様のために誂える」というお気持ちで、「OOの兜」などというものではない「まっさらな」「美しい甲冑」をお求めいただきたいものです。
 もちろん、マニアの方、その戦国武将を崇拝しておられる方がインテリアとしてお求めいただくのは結構かと存じます。

端午の節句 5

 多くのお客様が「鎧や兜ってこうして見せてもらってもどういうのが良いのかわからない」とおっしゃいます。たしかに初めてご覧になる方にはわかりにくいものかもしれません。ですが、そこをこらえて、10分、15分、何となくでけっこうですので色々眺めてみてください。「何だかいいな」「きれいにできているな」と感じて、あらためて価格を見るとやはり少しお高い商品だったりします。どこを見ればいいのかわからなくても、何となく感じることができるようになります。
 お店では「正絹です」とか「木彫りの純金箔押しの龍頭がついています」などの説明をしてくれますが、そのことと本質的な善し悪しとはあまり関係がありません。
 それは、私が描いた絵も、ピカソが描いた絵も、どちらも「麻布キャンバスに油絵具」でできていますが、価格は何億倍も違うのと似ています。
 一般的な龍頭も、良い龍頭もどちらも「木彫りに純金箔押」です。が、出来上がりはまったく違います。良い龍頭を扱っていないお店では、一般的な「木彫りに純金箔押」の龍頭が高級品として扱われます。使われている材料の説明にあまり意味がないというのは、こういうことです。

 先日、「和風総本家」という番組でこの龍頭が採り上げられました。龍頭といえば鎧や兜のごく一部分ですが、その小さなものにこの違いがあるということは、本体そのものはもっと違うということです。
 この龍は長岡京・粟生の光明寺さまの本堂の欄間にある龍をモデルにしているといわれています。彫りのシャープさ、複雑な形状、うねる龍鬚、小さな体に宿る迫力、兜の前に付けられると甲冑全体がいっそう引き立ちます。
004.JPG
 一般的な「木彫り純金箔押し龍」    良い「木彫り純金箔押し龍」

端午の節句 4

 端午の節句まであとひと月、節句品の本体だけでなく、ご親戚が贈るお祝いの品のお客様も増えてきました。
 写真は白馬です。古くは奈良時代から「白馬の節会(あおうまのせちえ)」といって、白い馬は縁起が良いといわれ1月や端午の節句、七夕など折々に白馬を眺める会が催されました。
 馬はいうまでもなく武士の必須科目です。山内一豊のお話を例に出すまでもなく、武家ではなによりも馬は大切にされてきました。また、馬の子は生まれてすぐに自分の足で立つことから、お子様が丈夫に育つようにとの願いもこめて贈られます。
 穂洲のこの馬は、一体ずつ桐塑を手でひねり出してこしらえられるので、それぞれ微妙に表情が異なり同じものがありません。また、毛並みに細かく裂いた和紙を用いているものは「奉書馬」とよばれています。この「奉書紙」は越前和紙の人間国宝・岩野市兵衛氏によるものです。この紙は「完全純白」「完全中性」といわれ、ほぼ永久に変質せず、大英博物館、ルーブル美術館など世界中の美術修復に用いられています。世界中の美術修復の専門家の間では最も著名な紙漉職人さんです。
 中国やヨーロッパにも陶製の馬飾りが多くありますが、この馬のような「柔らかい」飾り馬は世界に類がありません。その普遍的な造形美はヨーロッパでも称賛されていますが、肝腎の日本の皆さんにあまり振り向かれないのが不思議です。
 ヨーロッパの陶製のもののように量産品でありながら何十万円もいたしません。そのような値段をつければ却って話題にしてもらえるのかもしれませんが、やはり、お子様のお節句のお祝いに気軽に贈っていただきたいのです。

004.JPG
海外への記念品にもたいへん喜ばれています。

アーカイブ

ウェブページ

大西人形本店Webリンク