2017年1月アーカイブ

お雛さま選び

 今年も一月の最終日となりました。初節句をお迎えになるお子様をお持ちのご家庭では、どんなお雛さまにしようかお悩みの方も多いと思います。

 当店は地域で数少ない人形専門店として、創業から135年を迎えようとしています。明治15年に、京都・大木丸平人形の名古屋店として人形類を扱い始め、お雛さまの意味、お嬢さまの一生をお見守りするというご家族の皆さまの心からの願いを託すにふさわしいお人形を揃えております。
 世の中にいろいろな縁起物がありますが、お雛さまは古来より、そのお子様にとって最強の縁起物でございます。ですから、江戸時代には「家一軒分」の大枚をはたいてお雛さまをそろえたというお話も残っているくらいです。これは極端な話ですが、それほどご家族の皆さまがお子様への愛情をお雛さまに託したということなのだと思います。近くの予備校さんでは、お雛さまや端午の節句飾りを持っている方は必ず入試の前に飾るように指導しているそうです。これも正しいお雛さまの役目です。「お守り」として、そのお子様にだけに特化されたこれ以上ない強力なものだからです。  当店では流行のもの、粗悪なもの、大量生産品、外国製のものはございません。ご家族の皆さまの祈りを託す、神仏の依り代がお雛さまだからです。
 ある程度の着物や、漆器、絵画などを現物を見ずに買う方が少ないように、お雛さまを現物を見ずにお求めいただくのはなかなかの冒険だと思います。ベビー用品店さんや玩具店さんでも扱っておられるので「おもちゃ」か「ベビー用品」と思っている方もいらっしゃいますが、お雛さまは節句の調度品です。必ず店頭で現物を見て選んでください。そしてそのお雛さまを通してそのお店と信頼関係を結んで下さい。「節句品を買う」ということはそういうことなのだと思います。


 画像は初代・川瀬健山のお顔です。「良いお顔」の代表的なもので、好き嫌いの感覚で選ぶお雛さまとはとは少し違う種類のもののような気がします。

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かさね

 お雛さまの着ている着物は通称・十二単といいます。その美しさのひとつに、この袖口、襟元のたくさんの衣の色の組合せがあります。襲(かさね)と呼んでいます。
 この部分は作者がもっとも苦心をするところで、それぞれの特徴が出るので、ここだけでもおおむね作者が分かります。色の組合せによって雅な名前がつけられています。緑色の単(ひとえ)は端をこよりのようにひねるという、たいへん手間のかかる仕事がほどこされています。一枚ずつみると鮮やかな色なのですが、こうして組み合わせるととても格調高い雰囲気をかもし出します。すべて絹地ですが、色の発色がやはり化繊とは異なるような気がします。たとえばこの緑のような美しい色というのは絹地ならではでないでしょうか。

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御所人形

 プリップリのおしりです。赤ちゃんの姿はほんとうにかわいいですね。京都の御所人形司の方の作品です。片手で握れるくらいの小さなもので、初節句やご出産のお祝いに喜ばれます。頭は水引手と呼ばれる御所人形特有の文様が描かれています。
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お雛さまの意味

 クリスマスはもとより、バレンタインデーやハロウィンなどのカタカナのイベントがさかんになるのに反比例して、雛まつりや端午の節句はだんだんと存在価値が薄れてきているような気がします。小学生の実に半分以上は雛まつりや端午の節句が何月何日か知らないという、(私たちにとって)衝撃的な報告もあります。もちろん仕事ですので、どうしたらもっとお雛さまが売れるようになるだろうかということは根幹にあるのですが、それ以上に日本はこのままでいいのかしらと思います。
 多分、その原因のひとつに私たち業者の取り組み方の誤りや考え違いもあります。
 まず、お雛さまをなぜご両親様や祖父母様がお子様にお贈りになり、毎年飾るのか、ここが一番大切なところです。「お子様が健やかに育つように」という親御さまの願い、祈りや、一年間の無事への祝い、感謝であることは絶対に揺るがないものだと思います。であれば、そのたいへんに重いお気持ちを託すにふさわしいお雛さまを私たちはご用意しなければなりません。
 ところが実際には「飾る場所がない」「親が贈ると言うからしかたなく」「出したりしまったりが面倒くさい」、「どうせ数年しか飾らないのに高いものはもったいない」などのお声に過剰に反応して、ますます小さく、出し入れ簡単で廉価なものに全体に流れてしまっています。そこに親御さまの「祈り」とか「祝い」の入り込むすきがとても少なくなっています。
 お雛さまはおもちゃやベビー用品ではない、というのが当店の変わらない姿勢です。お嬢さまの生涯にわたってお雛まつりの調度としてお飾りいただくためには、100年間くらいは飾り続けられるものである必要があります。「可愛い」というのはお選びになるときの大きな基準のひとつですが、多くの場合「稚拙」と紙一重です。30歳になったとき、50歳になったとき飾れるかどうか、そのことの方がより大きな選択基準だと私たちは考えます。完成度の高い「可愛い」でなければなりません。赤ちゃんはだれでも可愛いのですが、赤ちゃんでいられる期間はほんの数年です。子供でいられるのも十数年、あとの70~80年は大人になってから飾ることになるのです。大切なのは完成度です。
 親御さまの祈りやお祝いの気持ちを込められるお雛さまかどうか、お嬢さまが生涯にわたり大切にされ、お雛さまに触れるたびに親御さまや祖父母さまのお心に思いを致してもらえるかどうか、そんなお雛さまをお客様に私たちはご提案できているかどうかを第一に考えて行かなければ、わが国のひな祭りという文化も永遠に引き継がれるものではなくなってしまうと思うのです。

可愛い官女さん

 昨年6月にお願いした官女さんがやっとできあがってきました。京都の職人さんらしい、清楚な官女です。お顔は崇山で、猪山や健山とはまた違う、独特の可愛らしさのある表情です。濃き色のハカマがすてきでしょ?
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謹賀新禧

謹賀新禧 
謹賀新年と同じ意味だそうです。当店の大正時代の広告に書かれていました。
今年も新しい気持ちで、今年も変わらない信条で、お客様をお迎えしたいと思います。

何十年も同じ店頭の正月のしつらえです。50年以上使っていた折敷を新調しました。お向かいさんが写りこんでいます。丸の内という名古屋の中心地ですが、ここは昔からの方々が多くいつもと変わらない落ち着いたお正月です。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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